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Apr 23, 2009

死にゆく

今日の日記の前に。
21日のadmittion noteの例の下に、カルテの解説&所見のとり方を載せたので(主に神経だけど。)、興味がある方は見てみてくださいな☆

さて。
今日は、大量にConsultがありました。
私も1人新患をもらいましたが、今日書きたいのは違う患者さんについて。
今日、初めて死にゆく人をみました。

緊急のコンサルでした。
コンサルの内容は”運ばれてきた患者さんの瞳孔が散大してきている”というもの。
先生と階段をかけあがりました。


60歳程度の男性。
お昼過ぎに職場で突然倒れたそうです。
心肺停止となり、蘇生されたそうです。
EDでどうだったかは情報が無いので分かりません。
ICUに上がってきた段階で、左眼が瞳孔径8mm、対光反射はなかったそうです。
脈・呼吸は安定し、挿管はされていましたが自発呼吸もある状態だったそうです。
それが、突如右目の瞳孔径が開き始め、対光反射がなくなった。

それが神経内科コンサルの経緯です。



素人の学生の私の目にも明らかにおかしかったです。
直感的に、”ヤバイ”、と感じました。

左眼の瞳孔径8mm、対光反射なし。
右眼の瞳孔径7mm、対光反射なし。
E2、VT、M3、GCS=6
手足をたまにびくっと動かしはしましたが、除脳硬縮でした。

緊急にCTを撮り(そこまで撮っていなかったのも驚きですが。)ました。
上がってきた映像に驚きました。

最初、硬膜下出血だと思ったんです。
倒れた際に頭打ったのかな?それにしては出血量多いな、と。
でも、どんどん下へと見ていくうちに、違う、と分かりました。
くも膜下腔も真っ白でした。


くも膜下出血を起こし、あまりにひどい出血だったので、硬膜下腔まで出血が広がった、というのが真相でした。
左側へ広がり、左脳を圧迫し、左脳は右脳を圧迫し。
脳全体がかなりゆがんでいました。
素人目にも明らかに、手の施しようがないほどの状態でした。

くも膜下出血を起こし、二次的に心肺停止だったのだろう、というのが先生の読みです。


すぐに脳外科にコンサルをしましたが、彼らも手の施しようが無い、という結論だったそうです。
低体温(脳の保護)にしようとしていたのも中止になりました。
挿管はそのままでしたが、それ以外の処置は中止になりました。
静かになった部屋に静かに寝ている患者さんをみて、なんとも言えない気持ちでした。



学生の目にも明らかに”やばい”と思うような患者さん。
目の前で刻々と瞳孔が開いていく患者さん。
初めて死にゆく人というのを目の当たりにしました。
正直、怖かったです。
ものすごく怖かった。

その患者さんが怖いわけではない。
多分、亡くなった後の患者さんに会っても怖くない。
静かになった部屋で患者さんと私っていう瞬間も怖くなかった。
なんだろう。生きてるのに、死に向かってる、っていう状態が怖いのかな。


私が部屋を出た段階で、まだ”生きて”いました。
死亡宣告に立ち会ったわけではありません。
脳死、という状態になるのでしょうか。
その後、怖くてその患者さんの電子カルテを確認していません。

医学部に入り5年と1ヶ月。
病棟に出てから10ヶ月。
本格的な実習を始めてから6ヶ月。
日本にいた頃も、霊安室からお香の匂いがする度に、誰かが亡くなったのだ、とは思いました。
いずれ目の前で”死”に出遭うことは覚悟していました。
それでもやはり、言葉では表せないような感情です。

苦しくなかったことを祈ります。
安らかな死であったことを祈ります。

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