Pages

Jun 20, 2013

脳症

今、うちの病棟には同時に二人、急性脳症がいます。
急性壊死性脳症と二相性脳症。
先週も別の脳症が一人いました。

私は今まで脳症を見た事がありませんでした。
怖いらしい、ということと、教科書的な知識しかありませんでした。
だから脳症に気付ける気がしていなかったんです。

でも、このたび見てみて思いました。
気付けるかも。おかしいんです。なんか、変なんです。
脳症の類に全く詳しくない私なので、その先の診断が出来るかはともかくとして、変。脳症のリスクがある。ということにだけは気付ける気がしました。

目が合わない、座れない、訳分からないことを言っている、など。
Not doing well、何となくおかしい。
ぱっと見た時の印象というのも大切なのだな、 と思いました。

逆に、私が親御さんに大丈夫ですよ、と伝えているのは。
熱があっても、
・生後4ヶ月以上
・発熱して数日以内
・元気にしている
・飲めていて、尿も出ている
時。
下手に救急外来や外来に来ても、他の風邪をもらってしまうことになるので、 家で様子を見てていいですよ、と伝えています。

咳や痰が酷くて、というようであればお薬を処方したりできるので、日中の外来にかかってもいいと思います。(夜間だと処方できる日数制限があるし検査もできないから日中がいいかな。)
少量頻回を試しても、ぐったりして飲めないのであれば点滴や静注が必要になるので、来てもらった方がいいです。
生後3ヶ月以内の感染症は重症なので、夜中でもかかった方がいいし、数日以上お熱が出ているのであれば、普通の風邪にさらに細菌感染症などを合併している可能性があるのでかかった方がいいと思います。

そして、そういう問題ではないような、明らかな変さが、脳症の子にはあるのだ、と実感。自分の当直中に来たら怖いです。。

Jun 18, 2013

医療拒否

医療は、受けるも受けないも、基本的には患者さん(未成年であれば親御さんも)が決めます。私たち医療者は説明をして、選んでもらいます。

なのだが。それは分かっているのだが。

昨晩の当直中の出来事です。
中学生の男の子が救急搬送されてきました。

どう見ても。重症な小児は重症な赤ちゃんほどは見慣れていないとはいえ。
どう見ても。変!おかしい!

ろれつが回らず、足下もおぼつかず、嘔吐もしていて、意識もややあやしい。

ご両親が外で警察と話をしている間に、尿検査をだして点滴をして採血をして。
確かに、尿と血液は異常はありませんでした。
でも、データより何より、本人の様子が変! おかしい!

なのに。
ご両親に現状を説明して、さらに検査が必要です、入院して経過観察が必要です、とお話をしているのに。大丈夫ですよ、とは言えないですと説明をしているのに。
精査も入院も拒否。

点滴を抜去してお帰りになりました。


これで帰宅後にその子に何かあったら。
私は訴えられるのだろうか?訴えられたら負けるのだろうか?
なんとなく理不尽。

カルテには詳細を記載し、医療拒否であったことも明記。
説得頑張ったんだけどなぁ。あの子大丈夫だったのならいいのだけど。

Jun 14, 2013

訳分からん病

最近の私、訳分からん病の子をひくことが続いています。
何の病気か分からない。だけど、明らかに身体的な異常があって、何らかの病名はしっかり付くだろうと思われる子。

あっちこっちの病院の先生に連絡をとったり、データや検体を送ったり。
教科書や文献を沢山調べて、どの方面の病気なのか、鑑別疾患を挙げてそれをつぶしていって。
訳分からないんです!って送るのではなく、当たりだけは付けたい。

そして、私なりの当たりが付いたので、週明けには転院搬送になります。
でも、私の推測だと、かなーりのレア症例になってしまうのです。
うーん。

Jun 9, 2013

SjS

Stevens-Johnson syndrome=スティーブンスジョンソン症候群=皮膚粘膜眼症候群

原因としては薬剤が多いですが、その他に感染、悪性腫瘍その他で起こる過敏症。
皮膚には多形紅斑が出て、眼脂、高熱などその他の全身症状が出ます。
特徴的なのは、皮膚粘膜移行部(唇のところとか、眼のところとか 、肛門のところとか)が酷いということ。

ステロイド投与を行い、皮膚の処置をして、原病があればその治療をして、眼科の先生に眼も診てもらって。

そして、軽症であればまだよいのですが。
(といっても、子供から大人まで合わせても100万人に数人程度の発症率で、眼に後遺症を残すことも多いので、重たい病気ではありますが。)

重症だと、TEN=Toxic epidermal necrolysis=中毒性皮膚壊死症
に進展していってしまうことがあり、要注意です。

そして。
私の当直中にSjSの子の症状が進行したため、転院搬送へ。
NICUにいた頃は、迎え搬送とかが多かったので、専門病院への転院搬送に同乗していくのは初めてで、ドキドキでした。

先輩Drに「とりあえず落ち着いて。搬送中に起こりうる事態は?」と聞かれ。
「呼吸状態の悪化。」と答えたら、「そうだよね?そうなった時の対応できるよね?なら大丈夫、行っておいで」と送り出されました。

無事に行って来れて良かった。
そして、よい転帰であることを祈ります。

Jun 6, 2013

CPAOA

CPAOA= Cardiopulmonary arrest on arrival=来院時心肺停止
つまり、院外で心肺停止になり、心拍再開しないまま病院に運ばれて来た患者さんの事です。

研修医でERを回っていた時に、大人に関しては沢山遭遇しました。
むしろ、ドクターカーで迎えに行って、胸骨圧迫をしながら帰って来たこともあります。

NICUにいた間にも、生まれたけど初期蘇生に反応しない子も経験しました。
先天疾患があり、NICU入院中に亡くなってしまった子も看取りました。
担当している子が亡くなったこともあります。


今日。
小児科に行って初めて、CPAOAで来た子を経験しました。
知ってる子でした。

来た時点でasystole(=心静止=全く心臓の電気活動がない状態)で若干色も悪くなっている状態でした。
挿管して人工呼吸を開始、胸骨圧迫を継続して、心臓が動き出すことを祈って薬剤投与も行いました。
でも、動かなかった。
何をしても、反応してこなかった。

30分ちょっとの時点で、お母さんに事実が伝えられました。
やれる事はやったけど、心臓が動き出してくれない、と。
名前を呼んで泣き崩れていた。そりゃそうですよね。

新生児や小児の場合。
蘇生を止めてご家族に抱っこしてもらった時刻を死亡確認時刻にすることが多いです。
full code(挿管、胸骨圧迫、薬剤投与など全ての蘇生を行う)ではないお子さんでは、心臓が完全に止まった時ではなく、ご家族が納得出来た時刻を死亡確認時刻にすることもあります。
今回も、お母さんに抱っこしてもらった時刻を死亡確認時刻としました。

どうしてなんだろう、という思いはご家族はもちろんのこと、私たちにも残ります。
血液検査の提出、死亡時CT(AI=autopsy imaging)を撮ったり、小児の場合は代謝疾患などの先天疾患の検査の為の濾紙血や保存血清を取らせてもらったりもしますし、解剖を行うことも少なくありません。

生まれて初期蘇生に立ち上がってこない子もすごく辛いし、先天異常があってNICUで看取る子もとても悲しいのだけど、小児のCPAOAのお子さんはシンドイ。
そんなことを思い知らされました。
 担当している子だったら、もっとシンドイのだろうと思います。

言葉ではなんとも表現できません。
ただただ、心が押しつぶされそうな、なんとも言えない感覚が残ります。
慣れることはないんだろうなぁ。

Jun 5, 2013

食べた

食べない子(小学生男児)が、私の外来に通院しています。
(いわゆる神経生食思不振症=拒食症、ではありません)
いかほど食べないかというと、脱水と低血糖を起こして複数回入院するほど。

入院中から担当していて、お話を沢山して、なんとか最小限、点滴は要らないくらいは食べるようになって、退院としました。

そんな子が!
外来で経過観察中に、食べるようになってきたんです♪
ピザやカレー、コロッケなどなど。
食べ方も、本当に少し(一口が私たちの1/5-1/10くらい)ずつだったのが、ある程度の量ずつ食べるようになってきたんです!
おかげで、体重も少しずつ増えて来ました。(本人的には、もっと増えてるはずだったのに、と凹んでいましたが。)

良かった!食べた!
最終的には、小児精神科を受診してもらわないとダメだろうとは思いますが、とりあえずは緊急事態は脱しつつあるかな、と。
ホッとしました。このままもうすぐ良くなるといいのだけど。

Jun 4, 2013

重心

重症心身障害児・者

正直に言います。

学生の時に初めてお見かけした時は驚きました。
なんとなく近寄れなかった。

研修医になって、担当するようになって。
抵抗は無くなったけど、どうしたらいいかが分かりませんでした。
可愛いよね、と心からは言えなかった。

去年。
生まれてからずっと担当してる子が、いわば少し動ける重心でした。
可愛かった。重心じゃなかったら?なんて想像できないくらい、その子が可愛かった。

そして今。
重心の子達にも感情はある。
それぞれの生活があって、家族の生活や負担がある。
そんなことを思えるようになりました。

重心の子が可愛い。
そう思えるようになっている自分に気づいて、去年一年に感謝したし、小児科医・新生児科医に一歩近づいたな、ってふと思いました。