脱水症。
まぁ、おそらくは医療関係者じゃなくても、ほとんどの方が知っている単語だとは思います。
なんですが。
私、ここまでの教科書的な重症脱水って初めて見ました。
思わず小児科部長の先生が私を呼んでくれたほど。
(まぁ、処置があるからいずれにせよ呼ばれたかとは思いますが)
体重が15%程度減少し、眼球が落ち窪み、口腔粘膜・口唇はひからびてカピカピ、皮膚も乾燥してカピカピでつまんだらつまんだ痕が残る(ツルゴール低下)、腹部もぺちゃんこ、ぐったりして反応なし。
ただし、高張性脱水だったため、血管内は比較的保たれていたのか、CRT<2secでしたし、末梢もそこまで虚脱はしておらず私でもラインが一発で入りました。
(脱水の種類によって、血管の中の濃度が濃くなる場合と薄くなる場合とがあって、脱水が強く出るのが血管の中の水なのか細胞の中の水なのか、とかちょっとした違いがある)
採血の結果に目を見張りました。
酸性アルカリ性の(pHの)バランスも非常に崩れ、塩分などミネラルの(電解質の)バランスも崩れ、脱水過ぎて腎臓の機能も低下し(腎前性腎不全)、ものすごく血が濃くなり(Hb、Ht、UA、BUN/Creその他、非常に濃縮しておりました)。
昼には補液を開始したのに、21時を過ぎても尿が出ず。
途中で再度採血をしたり、腹部エコー(一応、腎不全が脱水による結石など二次的な腎後性がないことを確認)をしたり、心臓エコーをしたり、いろいろしたんですけどね。
待てど暮らせど尿は出ず。最終的には、 エコーで膀胱内に尿の貯留を確認して、補液をK入りに変更しました。(K2.6という低値で、当然ながらモニターも付けている状態だったので、尿が作られ始めたことを確認したら早めに変えたかった)
補液ってけっこう奥が深いのです。
単純な話を書けば、小児の場合、基本的には尿が出ることを確認するまではKが入っていないK freeな補液を使います。
尿が出ない限り、Kは体からは出て行かないので、溜まってしまって不整脈などを起こしかねないので。
尿が出れば、Kも入っていてNaもそこそこ入っている補液に変更します。
さらに脱水分が補われてくれば、維持液と呼ばれる、NaもKも少し濃度を下げたものに変更します。
高張性の場合、急いで補液をすると、急激に血管の中の浸透圧が低下し、細胞の中に(特に脳神経細胞!)液体が流入してしまい 、後遺症を残しかねないので、比較的ゆっくりと補正していきます。
(もともと、脱水が強い場合には脱水量(≒体重減少量)を2日(ー3日)程度に分けて補正するんですけどね)
たかが脱水症、されど脱水症。
奥が深いです。
4 comments:
救命士のmuranishiと申します。
いつも先生のブログで勉強させて頂いております。
当地域では救急隊から二次小児科への直接callが認められておりまして、脱水の有無を病院選定の判断材料のひとつとしておりますが、やはり微妙な症例は判断に迷っております。(迷ったらオーバートリアージ、という原則はありますが)
元気のなさ、摂食/飲水状況、尿の出方、大泉門の陥没なども確認に努めているところですが、ほかに救急隊として確認すべきポイントがあればご教示お願いします。お忙しいところ恐れ入ります。
>muranishiさん
いつもありがとうございます。
私ごときが言えることは少ないですが。
おっしゃる通りで、パッと見の印象(活気や機嫌など、啼泣時に涙が出るか)、バイタル(頻脈や血圧、呼吸状態)、体重減少率がどのくらいか、飲水状況と排尿状況(嘔吐下痢をしていればそれも)、などが重要になってくると思います。
後は、大泉門の陥没以外にも、口腔粘膜の乾燥や皮膚の乾燥、皮膚ツルゴールの低下、CRTの延長などが見られるかと思います。
けっこうな脱水にならないと出てこないや、高張性脱水の倍は末梢循環が比較的保たれて過小評価になってしまう、などのこともありますが、今挙げたようなことは診察時けっこう気にしてます。
ありがとうございます!
幸いそこまで高度な脱水に遭遇したことはありませんが、
これからより気をつけて観察いたします!
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