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Jul 30, 2012

歯磨き

とある長期挿管中の患者さんがいます。
呼吸器感染症のコントロールがつかず、困っている状況でした。
おそらく、きっと、唾液が肺にたれ込んでいることが原因だろう、と思いまして。

調べました。
口腔ケアの方法について。
そして、先週ついに歯磨き(といっても、歯は無いから口磨きだけど)を始めました。
方法は単純、お水とガーゼと綿棒です。

でも、驚く事なかれ。
歯磨きを始めてから、あれだけ困っていた感染症がピタッと収まったんです。
最初はたまたまか?とか思っていたんですが、1週間以上CRP(炎症反応)が収まっていたことがなくて、おそらくは本当なんだと思うんです。

口の中ってそれだけ汚いんですね。
頻繁に母乳を飲んでるし、ちゃんと嚥下するから、普通の児は大丈夫なだけなんですね。
歯磨きの大切さを実感しました。

Jul 17, 2012

外来

私、外来って好きです。
NICUに来てからは忙しくて、あんまり外来に遊びに(見学に)行けていないのですが、前の病院にいた頃は、毎日午後は外来で過ごしていました。

他の科でもそうですが、外来を見られるようになるというのは大切です。
NICUでは、入院が基本ではあるので、まずは入院が見られるようになることが大切ですが、その後の発達などの経過まで含めて診られるようにならないと新生児科医にはなれません。

でも、NICUのローテーター(小児科医になるのにあたり、新生児も半年から1年回る)は基本的には外来は担当しません。
その後何年にも渡ってみていく必要があるけど、いなくなってしまうから。
だから、基本的には退院後1ヶ月までの超早期の外来を除いて、常勤の新生児の先生が外来を見ていきます。

なのですが。
新生児希望、を(一応)明言している私だからか、外来を少し担当させてもらえることになりました。
自分で入院中に診た患者さんのその後を診させてもらえるんです!


ただ、私は一般小児科をまだ回っていないため、一般的な小児科の外来をしたことがありません。
なので、実際に外来が始まる1ヶ月後までに、少しずつ発達外来の知識を身につけなくては、と密かにけっこう焦っています。

そして、上の先生の外来を見学さえてもらう機会を作るべく、今日は外来見学をする!って思った日は午前中に必死に仕事をしています。
上の先生にも相談しながらやっていこうとは思っていますが、外来は基本的に自分だけの目を通って帰っていくので、きちんと漏れが無いようにしていきたいです。

今、退院後早期の1ヶ月以内の外来だけでもようやく慣れて来たところで、まだまだ前日に予習をしている私なので。
本格的な外来が始まる頃にはもう少ししっかりしないとなぁ。
そして、my小児用の聴診器を購入したいなぁ(笑)

Jul 8, 2012

感染症

超未ちゃん(出生体重<1000gの超低出生体重児)たちは感染のリスクに常にさらされながら生きています。免疫力は弱いし、体が小さいからすぐ菌が回ってしまうし。

私が今担当している超未ちゃんが、私の当直中に具合が悪くなってしまいました。
たった数百gの子だけど、でもそれでも、元気がある・ない、は分かります。

朝から元気がなくて、皮膚の色(顔色、というよりは全身の皮膚の色が変わってくる)が悪かった。
感染を示す値が高く、感染症と考えられたため、抗菌薬投与を開始。

そうこうしている間に、無呼吸発作(呼吸をお休みしてしまうこと)が頻発。
血便も出るようになってきてしまいました。
血便のためか、感染で消費されたからか、貧血も進行。

昼前にオーダーしていた血液が夕方ようやく届き(赤ちゃんたちには新鮮な血液を投与したいので、よほどの緊急時以外は数時間待って新しい血液を届けてもらう)、投与しようとしたら、不規則抗体が出てるからこの製剤は使えない、と言われ。投与できる血液製剤を取り寄せるには、検査用に4ml(60kgの人で400ml。貧血で具合が悪い人から献血と同量の血液を採るようなものなのです)の血液が必要だと言われ。
もう、泣きたかったです。

仕方が無いから、採血して検体を検査科に提出し、循環を保つためにAlb製剤を投与開始し。
そこまでは、上の先生にメールや電話で相談しながら、なんとか自分でも頑張った。
けど、だんだん呼吸のお休みがひどくなってきていて、これ以上は頑張らせられない、せめて呼吸だけでも楽にしてあげたいから挿管したい、って思った時点で無理でした。

上の先生に電話して。
挿管したい状況だけど、この児の挿管は難しい(難しいことが前回で分かっていた)から、可能なら来てほしい、と。

学会に行っていた上の先生が飛んで戻って来てくれました。
泣きたいくらいの心境で、どうしたらいいか分からなくて相談していた先輩もすぐ来てくれました。


赤ちゃんにとって、感染症は怖い。
分かっていたし、今までだって経験してきたはずなのに、自分一人しかいない当直の時に直面した時の心境はどうにも表しようがなかったです。泣きたかったです。
早く元気になってほしい。早めに気付けたから大丈夫だと信じたいです。

Jul 7, 2012

初期蘇生

BLSじゃないけど、最小限の蘇生が出来る事って大事だと思うん
です。大人なら、胸骨圧迫。新生児なら、mask bagging。
枝葉末節はどうでもよい。この1つの手技が出来るだけで救われる命・予後があると思うんです。

BLSだってby stander CPRが大事だから、市民講習会とかをやって広めようとしている訳で。
新生児なんて、ほとんどが病院や助産院で生まれるのだから。そこで働く人たちが確実に蘇生できればそれでよいと思うのに。

どうして、その最小限のことが出来ないのだろう。
どうして、その数分間に有効な蘇生をしてくれないのだろう。
どうして?

赤ちゃんにとって、胎内から外に出るというのは、とてもとてもとても大きな変化。対応できなくて、最初苦しくなってしまう子がいるのも当然。

軽度な呼吸補助を含めれば、10人に1人は蘇生が必要になると言われている。
その辺を歩いている人がうっ、って心臓を押さえて倒れてしまい、胸骨圧迫をする頻度より、生まれて来た赤ちゃんが具合が悪くて呼吸補助が必要になる頻度の方が圧倒的に高い。

分かっているのに、なぜ?
もどかしい。あまりにもどかしい。

今年中に、NCPRのインストラクター取ろう。
少しでも有効な初期蘇生を(というよりも、何なら、胸骨圧迫や薬剤投与、挿管は出来なくて良い。mask baggingだけ出来ればいいと思うんです)出来る人を増やしたい。
インストラクターを取れば、少しは口出し出来るから。

赤ちゃんたちを危機にさらしたくない。
大切な人生の一歩目。みんなにちゃんと踏み出してもらいたい。

Jul 5, 2012

冷静

当直中、初めて全くの一人で、具合の悪い赤ちゃんの蘇生をして入院にして処置をしました。最初から最後まで1人で、っていうのは初めて。
在胎35週。頚部に臍帯巻絡が2回あり、Apgar score 4/7。
呼吸ダメ、筋緊張著明低下、全身皮膚蒼白。

でも、不思議と怖くなかった。
前回、呼んだ先輩が来るまでの間に1人で蘇生してた子の方が何倍も怖かった。
状況を過小評価していたわけでも、私の能力を過大評価していたわけでもないと思う。
冷静だった。

悪かったから、酸素濃度を上げるのも躊躇わなかった。
40%まで上げた2分くらいの時点で少しpink upして来てるのが見えた。大丈夫、蘇生はできる。
3-4分の時点で自発呼吸がしっかりしてきた。でも無く元気が無くてずっと呻吟(うなった呼吸)していて。
5分のapgar scoreを取った時点でも、まだ具合はとても良いとは言えない状態だったけど、大丈夫と思えた。
苦しかった様子だけど、初期蘇生は出来てる。

pink upはしてるけど、皮膚蒼白だし呻吟だし筋緊張低下してるし、入院にしよう、と判断。
呼吸を落ち着けて、貧血の有無や苦しかった度合いを含めて血液検査をしよう。
脳低温療法にはならないし、この様子なら、数日で落ち着くはず。
ここまでの数分間、判断と次への行動に迷いはなかった。


赤ちゃんの口元からmaskを外せないような状況だったけど、ご家族への説明も、私はあくまで穏やかに、冷静に出来たと思う。
赤ちゃんの状況の説明。自分で呼吸をしてくれているけど 、まだ苦しくて唸りながら頑張ってるから、赤ちゃんの病棟に入院にして、しっかり呼吸補助などの治療をしてあげたいこと。

私が焦った様子を見せてはいけないと思った。
冷静に穏やかに事を進めなくては、と思った。
目の前にいるご家族が不安に思ってしまうから。

NICUの病棟に連絡をして、入院の準備を急遽お願い。
「今生まれた子がnasalが必要そうなだから、入院の準備をお願いします。」
赤ちゃんから手が離せない状態だから、電話もご家族の目の前。落ち着いているとは言え赤ちゃんを診ながら、でも声は穏やかに。
でも、入院の準備が出来たという連絡を待っている間に、余りに呼吸が悪くて私が手を離せなくて動けないから数分後に再度電話。
「ちょっとmaskから手が離せないから、とりあえずもう連れて行っていいですか?」

蘇生から、入院手続きから処置から、検査、判断まで。
初めて全部1人だった。

翌日、上の先生に確認したけど、やったことは正しかった。
「呼んだ方が良かったですか?」と確認したけど、「別に大丈夫だよ」って言われた。
先輩に言われた。「出来るようになって来てるんだよ。」
私も少しは戦力になれて来てるかな。

先週、先輩を呼んでいる状況下で具合が悪い子の初期蘇生を1人でしたこと。
先週、29-30週の子をアドバイスがない状況下で蘇生させてもらったこと。
先週から今週にかけて、何人かほぼ私だけで検査治療方針たてさせてもらってること。

先週から今週にかけて、この土壇場のギリギリのタイミングで、なんとか一応戦力になるくらいに成長できてきてると思う。
まだまだこれから。先生たちからたくさんたくさん吸収したい。
学び大き、成長の一年にしよう。

Jul 2, 2012

X day

1ヶ月くらい前から。
とにかく不安で不安で仕方がなかった。

不安だったのは、Nに行ってからずっと頼って来た先輩がいなくなること。
そして、いろいろとうまくやっていけるのか、という2つの点。

不安過ぎて、朝も自然と早く起きるようになった。
自立したい、って思って極力自分で判断するように背伸びをして頑張った。
ホント、いっぱいいっぱいだった。
医療面での不安、背景因子の不安。
この1ヶ月で何度泣いたか分からない。

異動となる先輩たちに、「いなくなっちゃうんだから」とか「ラストスパートだ」とか「7月からも頑張って」とか言われる度に、過剰とも言えるくらいに反応してた。
ある時は、「頑張って」って言われた時に、いつもなら「はい!頑張ります♪」って言うところ、言葉に詰まってしまい「もう私に『頑張って』って言わないで!!」って悲鳴をあげるように部屋を出てしまったこともあった。

とにかく不安だった。いっぱいいっぱいで余裕がなかった。
お世話になった先生だから、本当は笑顔で「ありがとうございました」って言いたかった。
でも、実際は1ヶ月間いっぱいいっぱい過ぎて泣きっぱなしだった。
私の状態を知っていた先輩が、「私(たちを)置いていくのが心配だ」と最後まで言っていたくらいの状態だった。


そして、送別会。
いなくなっちゃう先生たち、そして久しぶりに会った大好きな憧れの先生。
元々、話を沢山聞いてもらって、沢山励ましてもらって、沢山慰めてもらっていたけど。
送別会の時も、いろんな言葉をもらった。
みんな心配してくれてる。みんな励ましてくれる。その気持ちが痛いほど嬉しかった。
諸事情あって、私(だけ)素面だったのに。
涙が止まらなかった。笑顔でいたかったのに、涙を堪えることが出来なかった。

大丈夫。明日からも頑張れる。
大丈夫。倒れないしdrop outもしない。
大丈夫。泣いちゃうこともなくはないと思うけど。
大丈夫。周りに頼りながら甘えながら、でも、しっかり自分の患者さんは自分で診きる。
きっと大丈夫。

そう思えた。
自分の患者さんをしっかり診る、ということ。
研修で回っている期間だけ診ればいいや、というスタンスではなくて、きちんと患者さんのことを責任もって診きる、というスタンスで診るということ。
できる、頑張れる、って思えた。

そして、今日。
先輩たちがいない初日。ついに来たX day。
いつも通り、朝1時間半早く出勤して、自分の患者さんの把握、指示出し、そして、採血。
指示、処置をしていた時。看護師さんに言われた。
「先生、今日すっきりした顔してる」

実は、今日は目が腫れてたんだけど。
多分、いろいろと吹っ切れたんだと思う。
不安でいっぱいで仕方が無かった先月までと比べて。
吹っ切れて、「大丈夫」って思うことにすることが出来たんだと思う。

だって、Mo先生、S先生に「大丈夫」って言われて大丈夫じゃなかったことはないんだから。
だから。大丈夫。

Jul 1, 2012

在胎週数

在胎週数によって、赤ちゃんって大きく違う。
特に小さいうちは、1週の違いが、1日の違いが、大きな違いになる。

私が今、当直中に一人で診ていいと言われているのは、仮死とかのリスクがない33週以降。
逆に、29週以下の子たちや1000g以下というような子たちは絶対私一人では無理。

では、その間の子たちはどうなのか。
30週から32週の子たちは、状況によりけり。
少しストレスがかかっていて呼吸状態が安定していることが予測されるような子であれば診れるし、そうでなくてなにかしか具合が悪い事が予測されれば、上を呼ぶ。
初期蘇生に関しては私もある程度出来るので、大丈夫と思ったら一人で立ち会いをしてもよいし、それで蘇生を始めて無理そうであれば、その場で上の先生を呼ぶ。

そんな指標は前から示されてはいたものの。
自分で診れるような気がしていなかったのですが。
最後の最後。6月最後の週になって、ようやく少しだけ自信がつきました。

いえ、6月最後の週。
なんとなく嫌な予感がずっとしてたんです。
基本的に良い方良い方に考えていってしまう私ですが、どうしても嫌なイメージが拭いきれなくて不安に思っていたんです。何となく、某患者さんが、元主治医の先生と一緒にいなくなってしまう気がして。そして、その嫌な予感が的中してしまった。
自信がついた、なんておこがましい事を言えるタイミングでもないし、自分の無力さは非常に痛感しているのですが。


だけど、今週。
少しだけ安心したのも事実。

一つ上の先生にお願いをして、半ば押しのけてまで、今週の帝王切開の立ち会いを私メインでやらせてもらった。29週から30週の子たち数人。

私の思惑を察してくれたのか、初期蘇生時に両脇に一緒に入ってくれた先生たちも、普段なら「酸素上げようか」とか隣から神の声をくれるのに、何も言わない。
私の判断で、私の思った通りに蘇生をした。
あまり迷いはなかった。 先輩がいてくれたこともあって、怖いという感覚はなく、自信を持って蘇生に臨めた。

病棟に上がって来てからの処置も一通り出来た。
研修医の先生がつぶした後の血管にラインを入れることもできた。
エコーできちんと評価することも出来たし、その後の当直中にNCVが必要な判断も出来たし、一人で入れることも出来た。
きちんと全身状態を把握して指示をテキパキと出すことも出来た。

当直帯に起こったこともちゃんと対処したし、朝のmilk upや輸液の指示、エコーなどの処置もテキパキとして、自分の患者さん+αを診ることができた。

大丈夫。
私、ちゃんと成長してる。
私、ある程度であれば、自分でちゃんと診ることが出来る。
7月からもきっと大丈夫。